天むす誕生秘話
夫への愛情が生んだ味
昭和34年、津市大門伏見通りで天ぷら定食の店を営んでいた初代・水谷ヨネは、忙しくて昼食を作る暇もありませんでした。
しかし、せめて夫には栄養にあるものをと車エビの天ぷらを切っておむすびの中に入れ出したところ「これはおいしい」と喜び、いろいろと苦労を重ねて味付法を生み出し「天むす」の誕生となりました。
飽きのこない元祖の味、どうぞご賞味下さい。
包装紙やラベルに書いてある「めいふつ」
「めいふつ?めいぶつじゃないの?!」と思われる方もおおいのではないでしょうか。
実はこれも初代水谷ヨネの発案なんです。
夫のまかないとして誕生し、常連客向けの裏メニューとしてふるまわれていた天むすですが、あまりの評判の良さに、「天むす」一本で勝負していこうと思い立ちます。
初代は必ずこれを名物に育てるという決意を込め、あえて濁点をとり「めいふつ」と名付けました。
いつか日本中の皆様に「めいぶつ」として親しんでいただけるよう頑張ってまいります。
千寿のこだわり
お米
天むすをつくる上で最も重要な素材といえば、やはり何と言ってもお米です。
お米一粒一粒がふっくらと炊きあがり、天むすにしたときに口の中でほろりとほどけるようなやさしさを持たせています。
素材を吟味し、炊き方にこだわり、愛情を込めて握ることで、お客様との『結び』になりますように。
きゃらぶき
いまや天むすの付合せとしてはずすことのできない「きゃらぶき」
実はこれも千寿が最初で、ほかのお店もこれにならいきゃらぶきを付けるようになりました。
初代水谷ヨネの旦那さんが、沢庵が苦手できゃらぶきを好んで食べたから、という微笑ましいエピソードが残されています。国内産高級ふきを丁寧に味付けした、初代の頃そのままの味は、天むすの付合せとしてだけでなく、食卓のお伴としても人気が高く好評をいただいております。
コーン油
天むすに使われているエビの天ぷら。千寿ではそれを揚げる油にもこだわり、高価なコーン油の中でも最高級の品質のものを使用しています。
コーン油は不飽和脂肪酸やビタミンEの含有量が多く、健康や美容にいい油とされています。しかし何より、初代がこだわって選んだこの油はてんぷらをカラッと揚げることができ、天ぷらとおむすびの相性をより引き立ててくれます。お客さまからも「天ぷらなのにさっぱりしている」「これならいくつでもいける」とご好評をいただいております。
海苔
時は1959年、「世紀のご成婚」と言われた今上陛下と皇后美智子様のご結婚は、「ミッチーブーム」と呼ばれる社会現象を巻き起こしました。そのブームの一つに美智子様がされていた独特のストールの巻き方がありました。
その巻き方に感銘を受けた初代「水谷ヨネ」は、それをヒントに「真中でななめに折る」海苔の巻き方を始めたのだとか。
今ではよく見かけるこの巻き方も、紐解くとこんなエピソードが隠されているんですね。これからも初代のこだわりを胸に美味しい天むすを皆様にお届けしてまいります。
経木
天むすを包んでいる経木とヒモ、実は自然のヒノキを使用しています。日本では昔から笹や柿の葉など自然のものを利用して「包む」という文化がありました。
最近はビニール製の人工皮が多くなりましたが、古くからの知恵ですね、自然由来のものは中に包まれるものの湿度を一定に保つ効果があります。そして何より、自然のものだと天むすを食べるときのあたたかみが違う気がしませんか?
天むすと一緒にぬくもりをお届けしたい。そのためにも、この経木を大事に伝えていきたいと思います。
縁起物
ご存知のように天むすにも使われている「エビ」は縁起物として古くからお正月に珍重されてきました。エビの「赤」は生命の色を表します。また、漢字で書いた「海老」は腰が曲がるまで長生きできるようにと、長寿の縁起物でもあるのです。また『天むす』は天と(人を)結ぶという語呂合わせにもつながります。
皆様にとこしえの福が訪れるよう、これからも心を込めて天むすを結んでまいります。